老人ホーム暮らしのエピソード GOOD TIME STORY 「自分らしく過ごせる住まいへ」【グッドタイムリビング】
2026年06月08日(月)
生活サポートスタッフの佐藤です。
きらきらとした新緑がまぶしい、過ごしやすい季節となりました。
皆さまいかがお過ごしでしょうか。
お洗濯物をお届けに、ゲストのお部屋へうかがったときのこと。
ふと、棚の上の本に目が留まりました。
「話題の佐藤 愛子さんの本ですね」
ユーモアとエスプリの効いた痛快なエッセイで、多くの人に勇気を与えたベストセラーです。
するとゲストから、驚きの一言が返ってきました。
「実は彼女、私の女学校時代の4~5年先輩なのよ。サトウハチローは異母兄にあたるの」
さらに、女学校時代は学徒動員で工場に行かれていたことなど、戦時中の貴重なお話も聞かせてくださいました。
さて、別のお部屋を訪ねると、ちょうど読書をされている真っ最中。
「何を読んでらっしゃるのですか?」とうかがうと、見せてくださったのは107歳の書家・篠田 桃紅さんの『これでおしまい』でした。
「すぐ読めてしまうから、あなたも読んでみるといいわ。図書コーナーから借りたのよ」
107歳でこの世を去るまで、自由を貫いた彼女の言葉。
そこには、老いを嘆くのではなく「今、この瞬間をどう生きるか」という潔い知恵が詰まっています。
「自由な気持ちを持ち続けることは、その人の人生を良く生きるコツ」
「私、幾つになってもいろんなことを発見しているんですよ。だから飽きないでやっているのよ」
力強いメッセージが、私の心にも深く響きます。
さらに別のお部屋で。先日他の方が読まれていた辻村 深月さんの『ツナグ』を発見しました。
こちらも図書コーナーの本です。
一生に一度だけ、死者との再会を仲介してくれる「使者(ツナグ)」。映画化もされた名作です。
こうして一冊の本が、ゲストの間を旅するように読み継がれている。その事実を知り、心がじんわりと温まりました。

当施設の「図書コーナー」には、名作全集から話題のベストセラー、美術書や歴史書まで、さまざまな本が並んでいます。
ソファーに腰かけ、本を手に思いおもいに過ごされるゲストの姿もよくお見かけします。
実は最近、ゲストから嬉しい「リクエスト」をいただきました。
「この小説の1巻目が抜けているんだよ」
「上の棚の本が取れないから、ときどき下の棚と入れ替えてほしいわ」
「すぐ準備しますね!」とお応えしながら、皆さまがこの場所を楽しみにしてくださっているのだと、とても励みになります。
さっそく本の配置を並べ替えたり、足りない本を補充したり。
ただいま、皆さまと一緒に「わが家の図書室」を育てている真っ最中です。
『これでおしまい』が教えてくれる「今を生きる覚悟」。
『ツナグ』が描く「大切な人とのつながり」。
図書コーナーで出会う一冊が、皆さまの毎日に新しい彩りや、心の平安をそっと運んでくれる。
これからも、そんな温かい場所であり続けたいと思います。
【追伸】
先日、お部屋に洗濯物をお届けにあがった際、作家 佐藤 愛子さんの訃報をゲストと共有しました。
「寂しいわね......」と静かにつぶやかれた横顔が忘れられません。心よりご冥福をお祈りいたします。
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